鹿の積ん読

漫画を読んだり、小説を読んだり。好きなものの話をします

無限の中の有限に(円城塔「Self-Reference ENGINE」)

 円城塔先生の「Self-Reference ENGINE」を読んだんですね。これがすんごく面白くてしかしちっとも理解が追い付かない、今回はそんな話です。理解という言葉を使うべきじゃないような気がしていますがしかし僕の語彙では他に適切な語も見つからないし、そもそも感想に賛否はあれど正誤はないでしょうから気にせずいきましょう。

 

Self-Reference ENGINE

Self-Reference ENGINE

 

 

 円城塔先生の作品は初めて読んだんですけど、まず驚いたのが異常なほどの読みやすさ。なんか小難しい話が人を煙に巻くみたいな語りで進行していくにもかかわらずすごく読みやすい。つかえることなく次へ次へと進んでいける心地よさたるや。床下からフロイトが出てくる話(文字通りの意味です)とか妙ちきりんな展開と語りのよどみなさが相まって、よくわからん短編ぞろいの本書の中にあってもひときわ輝いておりました。

 で、肝心の内容なのですが、これには僕ごときの説明が必要だとは思えません。というか説明ができないし読んでもらうのがいちばん手っ取り早そうなので割愛します。一応リンク先にもあらすじはありますし……読んでもよくわかんないけど……。

 あらすじを読んでもよくわからず、全編読み終えた今になってもやはり意味がわからないまま、それでもすごく面白いのがとんでもないです。有限の文字列から無限を創出し、そこから有限の意味ありげなエピソードを取り出すという遠回り。世界が変化し、もはやあるのかどうか定かではない理由や因果。無意味から意味を取り出す書き手と読み手の共犯関係。あらゆるテキストが行っているこれらの手続きそのものに楽しさを見出しているのかもしれないし、それすら僕の勘違いかもしれない。タイトルの通り本文中で自己言及が延々と行われ続けているからか、単に読解力不足のせいか、なかなか感想をひとつの言葉にまとめられませんどうしよう。明日になってこの文章を読み返したら自分でも何言っているかわからなくなってそうな気がしています。これっぽっちも理解できていない作品の感想を言葉にするのは難しいってか無謀ですね。いずれ追記するかも。追記に追記を繰り返せば本書で行われた行為の追随になりそうで面白いかもしれません。

 最後に。個々の短編からいくつか好きな話を選ぶなら「プロローグ」「Boddy-Socks」「Freud」「Japanese」「Infinity」「Echo」「エピローグ」です。こうしてみるとユーモア小説だな……実際そういう面も含んでいると思います。

 なんにせよ面白かったので他の作品も読んでいきたいと思います。市川春子先生が表紙描いてる「後藤さんのこと」とか読んでみたい。