鹿の積ん読

漫画を読んだり、小説を読んだり。好きなものの話をします

2021年9月まとめ

 

 

 ついにニンテンドースイッチを買いました。新型の抽選は外れたので従来型ですがPSP以降のゲームを知らない僕なのでめちゃくちゃきれいなグラフィックとすさまじいまでのつくり込みをとても楽しんでいます。やー、すごいですねゼルダの伝説ブレスオブザワイルド。

  今日一日を完全に持っていかれました。ホントに楽しい。野原を駆け崖にへばりつくだけでも楽しい。アクションスキルが低いので今後のボス戦とか苦労しそうですが、その辺も含めて隅々まで満喫しようと思います。今のお気に入りは落下し寸前でパラセール開いてダメージ無効にすることです。たのしい。

 では、今月面白かった作品たち。今月は百鬼夜行特集です。多分再来月くらいまでずっと読み続けます。

 

 

姑獲鳥の夏 (京極夏彦)

 夏が終わるなー、夏っぽい小説読んでねえなー、という思い付きから再読。びっくりするぐらい面白く、また以前は気づかなかったことがわんさか出てくるとても楽しい読書体験でした。今更言うまでもないことですけど名作ですねやっぱり。

 見えないもの、見えているもの、境界の向こう側にある不確かなもの。孤島や館、密室と呼ばれる区切りの中に閉じ込められている推理小説という形式に、憑き物落としという解決装置を代入しているのがやはり本シリーズ最大の特徴でしょうか。言葉による境界の操作。線を引き、扉を作り、視座を変える呪術。事件をそのまま解決するのではなく、妖怪としての名を与えて解体する憑き物落とし。美しい文字により立ちあがってくる彼岸の景色がとても妖しく、惹かれます。

 

魍魎の匣 (京極夏彦)

 はい二連続百鬼夜行です。今月は三連続百鬼夜行になります。いやー面白いですね! たぶん今回これしか言いません。面白いですね!

 二作目にして最高傑作の呼び声も高い(個人的な印象だと絡新婦とのツートップで語られてるイメージがある)本作ですが、評判に違わぬ完成度ですね。匣という強い境界のモチーフがとにかく良いです。ミステリ的には密室を想起するそれが、様々に形を変え次々と現れる。全ての匣を正しい手順で開けていく憑き物落としに惚れ惚れします。

 あと、本作については漫画版もめちゃくちゃいいので是非どうぞ。いや本作に限らず百鬼夜行の漫画版はすごく良いのですが、魍魎と絡新婦は特にラストシーンがいいです。「悪党、御用じゃ」と、箱と旅する一枚絵がめちゃくちゃ良い。

 

 

狂骨の夢 (京極夏彦)

 なんか狂骨だけ分冊一巻が出てこないので二巻で……。これ、三巻の表紙でかでかと「の」って書かれてるの? と思ったら「夢」で安心しました。三巻分冊なんですね。ちなみに魍魎三巻は「匣」でした。

 いやーおもしろいですね! でも京極堂がマジでいつまで経っても出てこないのには正直笑ってしまった。本当にに影も形もない。600頁主人公不在は強気すぎますけど全く問題なく面白いのでさすがの筆力と言わざるを得ません。彼岸と此岸、箱の内外ときて、今回の境界は頭蓋の内と外の世界。姑獲鳥、魍魎の時にも感じましたが、答えをそのままあらかじめ書いているんですね。解釈も意味付けもなく、夢と現実がそのまま一致する。言葉が現実と重なる。

 と三作続けて読んだわけですが、こうして連続して眺めていると共通テーマがくっきりと浮かび上がるのも面白かったです。見えないもの。見えるもの。人それぞれの世界。あらゆる現実に不思議なものはない。通りもの。名づけと解体。そして、それらを操る黒衣の拝み屋。

 

 

映画クレヨンしんちゃん 謎メキ!花の天カス学園

www.shinchan-movie.com

 面白いぜって評判だったので滑り込みで観に行きました。ちょー面白かったです。個人的にオトナ帝国に並ぶくらい好きです。オトナ帝国とテーマが真逆(あるいは同根)なのも並置しやすいですし。

 とにかく要素の配置と回収が上手くて、構成がきれいで、そのうえではみ出したり突き抜けたりする要素がさわやかで、つまりは理想的な青春ミステリだったと思います。 

 ミステリとして見るならば、僕はとある手掛かりを完璧にスルーしたので完全敗北です。頑張ればいい線いけそうというとてもいい難易度。青春ものとして見るならば、「いつかくる青春とその事前体験」という形式がかなりレアですごくよかったですね。幼稚園児が主役のクレヨンしんちゃんならではだったと思います。

 そして青春ミステリとして見たならば、「青春はミステリー」の合言葉に象徴される青春とミステリの対比がとても素敵でした。わからないものを解き明かすのも、わからないままに受け入れるのも、どちらも簡単に白黒に分けられるものではありません。孤独も間違いも後悔も青春の中にあり、時に暴力的ですらある青春を、一口によい言葉とは言えない青春を、パワフルに駆け抜けていく少年少女の姿がとてもとてもまぶしかったです。間違いなくオールタイムベスト。

 

 

子供はわかってあげない

agenai-movie.jp

 まさかの映画化。すげー面白かったです。絶対に無理であろう原作再現を変則的にこなしているのがプロの技ですね。大まかなストーリーラインを除き、設定も構成もセリフ回しもキャラクターの性格さえも原作と異なっているのに、「あの夏の空気」をきっちり切り取っているのがとてもいい。個々を見ると別物レベルで違っているのに全体図がよく似ているというのが魔法のようでとても不思議。原作で好きだったセリフもキャラもごっそり削られていたのに終わってみたら大満足というとても希少な経験をさせてもらいました。ぜひとも「水は海に向かって流れる」も映像化してほしい。

 

 

 終わり。百鬼夜行三作と映画二本という偏った月でしたが、とてもとても満足です。来月は鉄鼠、絡新婦の二冊読めたらいいなーと思います。なにせゲームで忙しくなるからな……!