鹿の積ん読

漫画を読んだり、小説を読んだり。好きなものの話をします

獣たちの宴(板垣巴留「BEASTARS」)

 最近、板垣巴留先生の「BEASTARS」を一気読みしたんですがめっちゃくちゃ面白いですねこの漫画。無料公開されてた1,2巻を読んだ次の日に本屋へ走って全巻かってしまいました。11巻発売直後のタイミングで読めたのは大変良かった。

 

 

 

 

 いきなり余談から入りますけど、僕はなぜかこの漫画を日常系だと勘違いしていたので冒頭いきなりクラスメイトが食べられちゃってびっくりしたんですよね。なんで日常系だと思ってたんだろう……。

 それはともかく、この作品で描かれる動物版ヒューマンドラマがとっても良かったです。「肉食/草食」という埋めようのない本能の差が残酷なまでに何度も何度も描かれるのが好みに直撃でした。

 最新11巻では、レゴシ・ハル・ルイの三角関係を軸に大きく天秤を揺らしながら進行してきた物語が、冒頭の「テム食殺事件」解決とともにひとつのゴールに行きつきます。弱肉強食、「強さ」が絶対的な意味を持つ世界でのレゴシの強さ、ルイの強さ。牙と爪で隔たれた両者が、隔たれたままに絆を結ぶ美しさ。とにかく95話から96話の流れが素晴らしかった。

 僕は人と人(この作品だと肉食獣と草食獣ですね)の間に横たわる断絶の話がすんごく好きなんですけど、「断絶を埋める」ことにはあまり重きを置いていないんですよね。それもありだとは思うんですが、埋まらないからこその断絶かなと考えてしまう。そんな個人的な理由もあり、レゴシとルイがたどり着いた断絶越しの絆という答えには撃ち抜かれました。いやすごい。回想キャンセルとかすげーいい。絶対に曲げられないものを守るために曲げざるを得なかった大切なものが、そのまま力になり強さになる。現実は残酷で、世界は何も変わらなかったけど、それでも一筋の光明が見えた。青春ですね。

 さて、第一部完な向きのある11巻でしたが、これこの後どうなるんでしょうか。すごい大ごとになりそうな予感もありますけど、できれば彼らがまた同じ学舎で学べる日が来るといいなと思います。次はレゴシとハルの物語ですかね。次期ビースターの件もまだほとんど進んでないし続きが楽しみです。