鹿の積ん読

漫画を読んだり、小説を読んだり。好きなものの話をします

臆病者の一歩(佐原ミズ「新装版 バス走る。」「尾かしら付き。」)

 遅ればせながら佐原ミズ先生の新作「尾かしら付き。1」&「新装版 バス走る。」買いました。読みました。読んで、穏やかな雰囲気にあてられ、僕はしばらく使い物にならなくなりましたとさ。

 

尾かしら付き。 1 (ゼノンコミックス)

尾かしら付き。 1 (ゼノンコミックス)

 

 

 

バス走る。【新装版】 (ゼノンコミックス)

バス走る。【新装版】 (ゼノンコミックス)

 

 

 佐原先生の作品に登場する人たちは、勝気な子も弱気な子も元気がいい人もおとなしい人も、みんなみんな少し臆病なところがあって、そこがとても愛おしいと思います。ひとの弱さに寄り添うみたいな雰囲気が全編通して流れている。

「尾かしら付き。」の主人公・那智は、年相応の弱さもあるけど、芯がとてもしなやかに思えます。あと素直ですね。一巻ラストがなんだか可愛らしくて少し笑ってしまいました。なんにも害はないけれど、「みんなと違う」豚のようなしっぽをめぐる彼女と彼の忘れがたい日々。出会いの章とでもいうべき中学生編を経て、彼らがどんな大人になるのかが楽しみです。

 短編集「バス走る。」は旧版持ってるのに新装版も買ってしまいました。新作収録らしいから仕方ない。てなわけで、新作の「烏帽子街停留所」も超良かったです。古傷に触られたくないという気持ちはよくわかるんですけど、優しく撫でてくれる手まで恐れてしまうのは悲しいしもったいない。まだ癒えない傷を抱えたまま、小さな一歩を踏み出した二人の時間が幸せなものになることを願うばかりです。焼き鳥、おいしいですよね。

 人間関係ってとてもこわいなと折に触れ感じますし、でもたぶん誰だってそうなんだろうなあとか思ってたんですけど実際のところどうなんですかね。ひとに触れるのも、触れられるのもとてもとてもこわいんですが、こわくない人もいるんだろうか。こわがりで、しかし優しい彼らみたいに、震える手を誰かに伸ばす、伸ばせる強さを持ちたいものです。

 書いてるうちに鉄楽レトラ読み返したくなってきた。本棚ひっくり返しにいってきます。鉄楽レトラも面白いからみんな読んでね!