鹿の積ん読

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世界は続くどこまでも(「Landreaall」32巻)

 先日発売された「Landreaall」32巻が相変わらずたいへん面白かったです。というわけで記事一発目はおがきちか先生の「Landreaall」について。

Landreaall 32巻 特装版 (ZERO-SUMコミックス)

Landreaall 32巻 特装版 (ZERO-SUMコミックス)

 

 

 作品の説明から入るべきですかね? えーと、本作はファンタジー世界を舞台にしたお話で、いわゆる「剣と魔法のファンタジー」を思い浮かべていただければそう外れてはいないと思います(正確には魔法はありませんがそれに準ずる能力・現象は存在します)。火竜と戦ったりします。王位継承候補者DX(本名です。ディーエックス)と彼の周りの人物を中心に、アトルニア王国の歴史の一端がゆるりと語られる、「変わりゆく国」の中で精一杯生きる人たちの群像劇。立場や歴史の要請を受け入れ、あるいはときに飛び越えながら、交わり流れる人の営みがとても素晴らしい作品です。

 日常生活の描写が面白いのはよいファンタジーです。派手な剣戟ばかりが華ではなく、友達と馬鹿をやったり、ぎこちなく恋をしたり、熊と一緒にブドウを食べたり。画面の向こうにはどこまでも世界が広がっているのだ、と感じられる瞬間がとても好きなんですね。モノクロの紙とインクで描かれる空想世界で、鮮やかな色彩や人の息遣い、音やにおいさえ感じてしまうような。

「物語には過去と未来がくっついている」とは作者のおがきちか先生の言葉ですが、なるほど本作の魅力をよく表しているなあと思います。過去があり、まだ語られぬ未来がある。世界は絶えず広がり続け、想像するしかできない部分があるからこそ、これほどに惹かれるのかもしれません。

  で、最新32巻です。人知れず役目を背負った人々のお話に、王都の裏側でこれまた人知れず生きている貧民街の兄弟の話と、どちらもランドリらしくていい話でした。思えば火竜の件からずっと、DXは約束を貴ぶたちでしたね。公平と正義、騎士と傭兵の中庸を行く彼が使うとなかなか意味ありげに感じます。

 そしてラスト。30巻で物語の大きな流れにひとまずの区切りがついて、この後何をするのかとても気になっていた中、まさかのダンジョン編に突入してしまいました。パーティーシャッフルとか指揮官タイプなのに前線に放り出されたティティとか立場を忘れて飛び出しちゃうイオンとか、開幕早々なかなかとんでもないことになってますね。ランドリ屈指の名エピソード「アカデミー騎士団」編の再演にやるのではないかと今から非常に楽しみです。しかし続きは半年後か、長いな……てか主人公どこいったんだよ……。

 

 てなわけでランドリオール面白いよって話でした。おすすめです読んでね!