唐突に漫画ATB:群像劇編
突然ですが自分的にオールタイムベストとでもいうべきおすすめ漫画をいくつか紹介したいと思います。他に「短編編」「ギャグ編」「青春編」「特別編」など考えていますが今回は群像劇編です。次回があるかはわかりません。
1.「Landreaall」おがきちか(連載中・既刊32巻)
Landreaall: 1【イラスト特典付】 (ZERO-SUMコミックス)
- 作者: おがきちか
- 出版社/メーカー: 一迅社
- 発売日: 2012/12/07
- メディア: Kindle版
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…でも
僕らが掛け値なしの友情を手に入れるのってほんとうにむずかしいんだよ
王道学園ファンタジー。革命を経て変化する国の中で、立場の異なる人たちがそれぞれ精いっぱい生きている世界。 同じところなんてひとつもないくらいに違う彼ら彼女らが、互いに影響し合い成長していくさまが色鮮やかに描かれていて、何度読んでも飽きません。何もかもが突然変わるわけではなく、全ての変化はゆるやかに日々の流れの中でゆっくりと降り積もるものです。出会い、時に衝突しながら、一人一人の小さな変化がやがて国や世界といった大きなものを動かしてゆく。世界に満ちた涼しい風がたまらない傑作です。キャラクターのバックグラウンドが見えてくると一層面白くなりますので、できればまずは8巻くらいまでどうぞ。
2.「パンプキン・シザーズ」岩永亮太郎(連載中・既刊22巻)
Pumpkin Scissors(1) (月刊少年マガジンコミックス)
- 作者: 岩永亮太郎
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2012/11/05
- メディア: Kindle版
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延々と! 繰り返していると言ったな シャウラッ‼
その通りだッ その繰り返しの遺骸の上に今ッ
我々は立っている 押し上げられている
あと少し… あと ほんの少しの所にいるかもしれないのだッ
私も おまえもッ
私は…諦めたくない…
戦災復興哲学バトル漫画。愛とか正義とか、かつて僕たちが信じていたジュブナイルを切実に希求する姿に胸が震えます。超熱い。序盤で提示される少年漫画めいた設定・展開は、徐々にその裏側に隠れたSFギミックと哲学によって現実の地平へと引きずり降ろされます。「戦車を倒す歩兵」という超人的な存在、わかりやすい勧善懲悪、愛が人間を救う。それらは確かに存在します。存在し、その価値を認められると同時に、問いかけられる「本当にそれは確かなものか?」という疑問。英雄は人殺しであり、善悪の境は曖昧で移ろうものであり、愛を貫くことは言葉の上ほど簡単ではない。それを理解した上で、それでもどこかにあるかもしれないイデアを求める茨の螺旋階段は、最新21・22巻でひとつの答えを導きます。「未完成」な彼女の正義を是非ともご覧いただきたい。
お前の科学絶対間違ってるよ‼
ローファンタジー青春学園漫画。「見た目が少し違う」だけの亜人種が存在する世界で、人間からエルフから翼人からドワーフからがしっちゃかめっちゃかに送る学園生活がとても楽しい。キレキレの台詞回しにくすりとし、飾りでしかないアイデンティティに悩み、恋に右往左往をし。普通ではない世界で、普通に青春を謳歌する高校生たちの眩しさよ。たまにニッチな性癖が見え隠れするのは何なのでしょう。高校生らしいと言えばらしいのかな?
4.「ハイキュー‼」古舘春一(連載中・既刊36巻)
「バレーボール(排球)」
コート中央のネットを挟んでボールを打ち合う
ボールを落としてはいけない
持ってもいけない
3度のボレーで攻撃へと”繋ぐ”球技である
バレーボール漫画。すげー数のキャラクターが、それぞれに主人公として活躍していく凄まじいまでの作劇力に言葉をなくします。各キャラクターが抱えるテーマ、それらが重なりあって生まれる「コンセプトの戦い」を、尽きることのないドラマを、「繋ぐ」ことが命というバレーボールの性質をもって右肩上がりの面白さで魅せ続けるという凄さ。展開といい演出といい、総合スコアの高さにビビる。「一回戦負けのチーム」「コーチや監督」「補欠」「マネージャー」「応援席の観客」などなど、コートの中にいない人たちのドラマさえ拾い上げ肯定する繊細さも大好きです。
冗談言うな おまえはあの化物と戦った者達を見てきたんだろう
思い出せ
大真面目なんだよ
おまえも… オレ達も
ストリートファイト漫画。癖のある絵柄で癖のあるキャラクターが次々登場する癖のある漫画です。出てくる奴らがどいつもこいつも面白く、独自の演出・台詞回しを用いて読者を問答無用で引きずりこむ力強さがとても良いと思います。個性豊かな戦闘狂たちが一箇所に集められ、何が何だかわからないまま壮大な絵巻を作り出す最終章・深道ランキング編がとても熱くてオススメです。愛だ!
瀕死の朝田先生、追い詰められた少年、
――そして、私たち「凡人」。
それは、ひたすら弱い者たちでした。
医療漫画。何度もドラマ化されているのでご存知の方も多いでしょう。ドラマ版では天才外科医・朝田龍太郎の物語という側面が強かったように記憶しています(もううろ覚えですけど)。しかし、本作の魅力は天才を前にした凡人たちのヒューマンドラマにこそあるのではないか。朝田龍太郎にはなれないから、それぞれの道でそれぞれの価値を手に入れんともがく。人の命を預かる病院という、才能の無さが言い訳にならない苛烈な戦場で、医師はいつだって必死です。様々な願いのかたち、その中でも凡人代表・霧島軍司の物語には感じ入るものがありました。そして、最後には朝田自身も人間として自らの物語に区切りをつける。エピローグがとても好きです。
僕がずっと求めていたものは
こんなに命懸けで手に入れるものだったのか…
動物版ヒューマンドラマ漫画。肉食・草食という底なき断絶を抱えた世界を舞台に、尊いいち個人として関係を結ぼうとする獣たちの青春。パーソナリティが血の呪いに飲みこまれかねない残酷な神の下で、彼らはどう生きるのか。本能を乗り越える、なんて理想でしかなく、上書きしても消えることは永遠にないのです。11巻で訪れたクライマックスはある意味では敗北の証であり、しかし同時にこれ以上ないくらいの穏やかな救済でもある。第二部が始まるであろう12巻もとても楽しみ。
以上七作。群像劇ということもあり全体的に巻数が多くて手を出しにくいかもしれませんが、どれも超おもしろいのでぜひ読んでみてください。