鹿の積ん読

漫画を読んだり、小説を読んだり。好きなものの話をします

スキップ、ローファー鳴らして(高松美咲「スキップとローファー」)

カナリアたちの舟」の高松美咲先生によるほのぼのスクールライフコメディ「スキップとローファー」の感想です。素晴らしかった。

 

スキップとローファー(1) (アフタヌーンコミックス)

スキップとローファー(1) (アフタヌーンコミックス)

 

 

岩倉美津未、今日から東京の高校生! 入学を機に地方から上京した彼女は、勉強こそできるものの、過疎地育ちゆえに同世代コミュ経験がとぼしい。そのうえちょっと天然で、慣れない都会の高校はなかなかムズカシイ! だけど、そんな「みつみちゃん」のまっすぐでまっしろな存在感が、本人も気づかないうちにクラスメイトたちをハッピーにしていくのです! 

   良い表紙ですね。たぶん美津未、スキップ上手じゃないと思う。

 

 本作は田舎から東京へ出てきた少しおっちょこちょいでズレてる女の子・岩倉美津未とその周囲の高校生の青春をゆるくあたたかい筆致で描いた作品です。最近一巻が出たばかりです。今すぐ買いましょう。

 学生時代、上手にできなかった記憶というのは誰にでもあると思います。失敗して空回って、夜に布団の中で叫びだしたくなるような苦い出来事の数々。消化しきれない思い出も多々ありますが、あれらを「まあ、悪くはなかったな」と思えるようになったのは、僕の場合はつい最近でした。「失敗しても良いんだよ」なんて結局他人だから言えることかもしれませんが、それでも誰かにそう言ってもらいたいと願う人はいるのではないでしょうか。当時の僕はそうでした。「スキップとローファー」は、そんな誰かの失敗や悩みを解きほぐしてくれる、かもしれません。

  ちょっとだけ話は変わりますが、人間関係って難しいですよね。思春期の、いや大人になっても悩みの種の多くは複雑怪奇な人間関係にあるように感じます。だって相手が何考えてるかなんてこれっぽっちもわからない。自分のことさえ正しく理解できないのが人間ですから、出会って二日三日の他人のことを理解できるはずなんかありません。そんな世の中ですから、「scene2 そわそわのカラオケボックス」がすごく良かった。

 

 …どういう意味?

いや わかるわけないか 出会って二日だもん

こんなこと考えたって仕方なかったんだ

 

「考えたって仕方ない」と言い切れるおおらかさは素敵だと思います。中身がわからない箱を前にして、良いものが入っているかもしれないから大切にするのではなく、悪いものが入っているかもしれないからないがしろにするのでもなく。わからないものを棚上げにして仲良くするのって、たぶん簡単じゃありません。わからないから、少しずつ。素敵な考え方ですね。

 そんなふうに持ち前の性格で他人と触れあい、ちょっとずつ理解したりされたりしながら自分も相手も少しずつ変わっていく。ゆっくり流れる時間の中で今を精一杯楽しむ彼らの今後が楽しみです。あったかくて、それだけじゃなくて不安もあって、等身大ないい漫画でした。