回帰、拡張、絶望の底はまだ遠く(オキシタケヒコ「筺底のエルピス6-四百億の昼と夜ー」)
筺底のエルピス6巻の感想になります。今回もやばかったですね。みんなやべえやべえ言ってて何事かと思いながら読んだら本当にやばかった。
筺底のエルピス 6 -四百億の昼と夜- (ガガガ文庫 お 5-6)
- 作者: オキシタケヒコ,toi8
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2019/01/18
- メディア: 文庫
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時間的にも空間的にもさらに物語の規模が大きくなり、今回もマクロとミクロの両面で素晴らしく面白かったです。マクロの面では開かれた箱の外に広がるさらに大きな構造体の美しさと恐ろしさに身が震え、ミクロの面では人間ゆえのゆらぎが生み出す色鮮やかなきらめきと悲哀に心が震えました。とっくにわかっていましたが、この作品すさまじく整った形をしていますね。
オキシタケヒコ先生曰く「同じネタを延々と繰り返すけど、物語の規模だけがどんどん大きくなっていく」というマトリョーシカ構造。これまで場に出され伏せられてきたカードが次々とめくられ、四百億の彼方より現出した構造体がヒトと歴史を内側に取り込んで動き始めてしまったわけですが、一体これからどうなるんでしょうか。ハッピーエンドがまるで見えない。絶望はどんどん大きくなっていくのに希望の光は同じ大きさを維持しているというのは容赦がなくて怖いです。なんだか、四巻のときも同じような悲鳴を上げた記憶があります……阿黍さん……。
戦士たちの運命は過酷で、人間性をすり減らしながら死にもの狂いで「繋いで」いってるのがとても辛いのですが、しかし同時に、ぼろぼろになりながら立ち上がる彼らの決意の輝きにたまらなく惹かれる僕もいます。先なんてまるで見えない暗闇だからこそ見える小さな灯があるということで。
未来のために今を手放した男、今のために未来を棚上げした男。空っぽの手と空っぽの箱。迷いながら一歩を踏み出した若人たち。大きな流れの中にあって、あまりに小さな彼らのドラマが織りなすタペストリの行く末が本当に楽しみです。誰も死なないといいんですが、無理ですかね……。
しかしこれ、本当にどう切り抜けるんでしょう。考えれば考えるほど詰んでる気がします。時間制限まであるわけですし……。未来の絶望の前に今の絶望に心がくじけそうですが、はやく続きが読みたいです。一年くらいで出るといいなあ。
あ、あと猊下があざとさMAXのキャラクターですごく好きになりました。シリアス全開の中で彼の言動にどれだけほっとしたことか。次巻でかっこよく活躍してくれることを期待しています。