鹿の積ん読

漫画を読んだり、小説を読んだり。好きなものの話をします

2022年12月まとめ

 

 完全に時期を逃しておりますので今更あけましておめでとうとは言いませんが、皆さま年末年始いかがお過ごしでしたでしょうか。私はどう考えてもこんなことしてる場合じゃないなと思いながらやるべきことではないことをやったりしていました。つまりいつも通りですね。2023年もいつも通りゆるくやっていくつもりです。よろしくお願いします。

 

イリヤの空、UFOの夏 (秋山瑞人)

 もはや古典と言っていいかもしれない、ある種の作品群の先駆けですね。6月24日、全世界的にUFOの日から読み始めて、読み終わるまでなんと半年近くかかりました。一作にかけた時間としては最長かもしれません。

 時間がかかった理由は単純で、相変わらず文章が死ぬほど上手く、死ぬほど上手いがゆえに読み進めるのが物凄くつらかったからです。奇しくも作中と同様、夏の延命を図った形になりました。こんなにも「夏」が象徴的な作品だとは……。

 ほぼすべてが詳らかに語られる学園生活と、対照的にその詳細がほぼ語られない園原基地の内実。秋穂の心情は詳細に語られ、榎本の真意は最後まで明言されない。語りによって伝える。語らないことで想像させる。相反する二つの技術がともに最高水準というわけのわからない離れ業を成している傑作でした。

 

 

それでも君を幸せにしたい ~3巻(野呂俊介/ときゎ)

 三巻で完結か~。もっと続いてほしかったと思いますが、二人(三人)の関係に絞るならこのくらいの長さになりますよね。アグロ極まる変則三角関係ラブコメ。深刻さをとことん削り、心底楽しそうな作品になっているのがとてもいいです。

 野呂先生の作品は毎回そうですが、キャラクターが可愛く、加えて本当に日常を楽しんでいる感じがあるのがとても好きです。前作が付き合うまでのわちゃわちゃでエンタメしていたから今作は付き合ってからのイチャイチャを見せつける、みたいなコンセプトだったのでしょうか。

 

 

トリリオンゲーム ~5巻(稲垣理一郎/池上遼一)

 何度見ても大物タッグすぎる……。アグロ極まるマネーゲーム。ハッタリが馬鹿馬鹿しくなるくらいド派手で見ていて楽しいですね。

 日本の片隅から元手ゼロでトリリオンダラー(1,000,000,000,000$)を稼ぐ、という果てしない道のりを異常なスピードで駆け上がっていくのがいっそ爽快です。すごい。何がすごいって作品のほとんど100%がハッタリで構成されているところです。全てがハリボテ。ヒューマンドラマは大真面目なのにひとたび人間からフォーカスが外れた瞬間すべてがホラ話になるという大胆すぎる構成をトリックスター稲垣理一郎と大御所池上遼一の剛腕で無理矢理通すという。おそらくはそう遠くないゴールが今から楽しみです。

 

 

かぐや様は告らせたい ~28巻(赤坂アカ)

 サブタイ書かなくていいよね? なんだかんだ長かったラブコメもついにフィナーレ。贅沢な紙幅で語られるエピローグがしみじみ良かったです。

 とはいえ、実は感想に書くことあんまりないんですよね。すべてが丁寧に作中で描かれているので。ラブコメ的な山場はとうに終わっており、その後に語られるのは長い長いエピローグ。物語から一歩外れて、終わりの後を語ってなお、作品である以上終わりはやってくる。恋が成就しても、フラれても、卒業しても人生は続くけれど、語るべきことを語り終えたならピリオドを打つのが美しいというものです。作画としての活動は終わりにすると宣言している赤坂先生ですが、次回作も楽しみです。

 

 

ぼっち・ざ・ろっく!

bocchi.rocks

  普段は原作付きのアニメをあまり観ず、たまに気になるオリジナルアニメを観るか、そうでなければ新作が放送されるたびにOPとEDだけチェックする私ですが、今期は珍しく漫画原作のアニメを毎週しっかり鑑賞しました。そう、「ぼっち・ざ・ろっく!」です。

 どういうわけか異様なほど細部にこだわった完成度の高いアニメでしたが、中でも特に楽曲が良かったです。本当に良かった。OP、ED、作中歌が軒並み素晴らしく、アニソン好き兼邦ロックーー中でもガールズバンドが好きな身としては嬉しかったですね。

 楽曲だけでなく、キャラクター、ストーリーも漫画を踏襲しつつアニメ化に当たり磨きがかけられていて、後藤ひとりの成長物語として完成されていたところにも愛を感じました。最終話Cパートめちゃくちゃ良かった。

 結束バンドオリジナルフルアルバムは名盤なので皆さん聴きましょう。私が好きなのは「カラカラ」「ひみつ基地」「星座になれたら」とアジカンのカバー「転がる岩、君に朝が降る」です。

 

 

 というわけで2022年ラスト分のまとめはここまで。締めくくりにふさわしい満足感でいっぱいの月になりました。