鹿の積ん読

漫画を読んだり、小説を読んだり。好きなものの話をします

2022年2月まとめ

 どえらい忙しい一か月でした。ゲームって時間吹き飛びますね。

 

EVER17

 PSP版、空さんが一番前に出てるんだ……。

 いつ買ったのか全く覚えていませんでしたがPCの整理してたらサルベージされたので一気にクリア。あーだーこーだ言いながらプレイしました。

 数打ちゃ当たる方針の推理とも言えないような書きなぐりとともに進めたわけですが、いやーめちゃくちゃ楽しかったです。各キャラのルートで語られるテーマと現象が全く違うことにかなり惑わされました。ひとつで一作品引っ張れるようなSF的現象を次々出しておいて、とっ散らかった印象にならなかったのがすごいと思います。大ネタのデカさで最終ルートを束ねあげる力強いストーリーテリングがすごくよかった。

 

ドロステのはてで僕ら

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 70分ワンカットの時間SF映画という力作。

「2分間だけ時間がずれたモニター」を使ったコメディSF――というネタ自体はままあるとは思いますが、本作はそれをワンカットで撮りきったのがとてもいいです。恐ろしく緻密な計算とスケジューリングが必要な撮り方なのに、その実現方法が紙に書いたスケジュール表とアナログなストップウォッチという。すげー力技。ぜひともメイキング映像を見せてほしい。

 

キミの青春、私のキスはいらないの?1,2巻 (うさぎやすぽん)

 頑なな男の子が女の子と出会う一巻と、頑なな女の子が男の子を見つめる二巻。泥臭くてグダグダで、ままならない青春の日々がむずかゆくってとても良かったです。

 うさぎやすぽん作品のクライマックスがすごく好きです。不格好で、けど勢いがあって、そうあらねばならない衝動をひしひしと感じる文章が好きです。ライブシーンにぴったりでした。飾りもせず、繕いもせず、ただただむき出しの願いを音に乗せて歌い上げる声。誰かに届け、届いてくれという、計算ではない熱量があったと思います。

 

猫の地球儀 焔の章/幽の章 (秋山瑞人)

 初の秋山瑞人。文章が超絶うまい。マジうまい。内容ではなく文章自体に感動したのは久しぶりです。

 宇宙を生きる、飯と寝床だけでは生きられなかった猫のSF。感想を語るよりもまず読んでほしい作品ですね。とにかく語りの技術がずば抜けている。ぷろろーぐとえぴろーぐについては、もう完璧と言ってしまっていいのではないかとさえ思います。

 

Pokémon LEGENDS アルセウス

 くっそ楽しい!!!!!!!!

 

 

 以上五作。ですけど8割はEVER17ポケモンやってた気がします。スイッチ買ってからこっち、ゲームがとても楽しくていいです。今はシュタゲやってるよ。

 

 

2022年1月まとめ

 

 あけましておめでとうございます! アルセウスEver17とで忙しくてこのブログの存在を完全に忘れていました。今から急いで書きます。ゲーム超楽しい!

 

負けヒロインが多すぎる!1~2 (雨森たきび)

 負けヒロインラブコメ。失恋を終わりではなく続くお話の半ばとして扱っているのがすごく良いです。スイッチを切るようには終わらないし、仮に終わったとしてもその後に始まるものもある。失恋を切実に取り上げながらも全体の空気はあくまで明るいコメディに寄せているところもいいですね。暗くならなきゃいけない理由はありませんもの。

 

ひげを剃る。そして女子高生を拾う。5 (しめさば)

 完結。一気に終わった……。

 女子高生だから、おじさんだから、ギャルだから、私はこういう人間だから、兄だから、母だから、そんな記号に対してそれだけじゃないんだと祈りを捧げる作品であり続けてくれたことがとても嬉しいです。正しさだけではないし、優しさだけでもない。そしてそのうえで、そういった記号がついてくるのは止められないという視点も含んでいたのが誠実だと思います。話して、伝えて、落としどころを見つけなければ。

 

学園者! ~風紀委員と青春泥棒~ (岡本タクヤ)

 文化祭やってくれよ~。しかし残念ながら一巻完結。

 色とりどりの青春をハレもケもひっくるめて放り込んだ、まさに学校というカオスみたいな小説でとても良かった。元気に走り回ろうが、隅っこでスマホいじってようが、白球を追いかけようが、屋上で殴り合ってようが、ハーレム作ろうが、悪戯しようが、後悔しようが、青春と呼ばれる化け物は良くも悪くも全てを飲み込む容量があるということ。そうあってしまうということ。嵐のように過ぎゆく日々に、ほんの少しの幸運あれと思わずにはいられません。

 

わたし、二番目の彼女でいいから。1~2 (西条陽)

 二番目同士で付き合っている――という建前があっという間にボロボロになって引きつった笑いが出ました。ひっでえ。

 一巻の表紙を飾る二人のヒロインと主人公くんの歪んだ三角関係が楽し……楽しくないですね。怖い。建前という支えを取り払い、四方八方から圧力を加えていったらどこで破断するのかな? という感じの小説なんですが、恐ろしいことにこいつらの関係全く壊れない。壊れそうなのに、生身に食い込み血が流れてなお関係が持続している。しかしインモラルでえっちな雰囲気が他にない作品でもあります。ほとんど本番してるようなもんじゃない?

 

ハクメイとミコチ 10 (樫木祐人)

 祝10巻! 読めばわかる作品だし今更語ることはないんですが、ひとつの節目で感慨深い。ながーく続けてほしいなあ。

 

へうげもの ~25 (山田芳裕)

「物のために死ねるか?」という問いかけに、戦国乱世を生き抜く曲者たちがその生涯をかけて答える。ひとつの茶釜に、茶室に、屏風に、自身の写し絵である世界をつくるということ。砕かれ燃やされてもなお残る意志について。生き様の物語であると同時に、どこまでも死にざまの話でありました。本当に只では死なない化け物しかいなかった……。

 

それでも君を幸せにしたい 1 (野呂俊介/ときゎ)

 こんなアホな二重人格誕生秘話初めて見た。「いけるとこまで」「スピーシーズドメイン」の野呂先生の新作ですね。スピーシーズドメインに続き、ひたすらに楽しそうなのがめちゃくちゃ良いです。モブの一人にいたるまでマジで楽しそう。本回は主役二人(三人)にフォーカスが絞られていますが、また徐々に周辺部の描写が増えていったら嬉しいですね。

 

 嬉しいことですが忙しい時に限って多い。多分過去最多ですね。でも三十分ででっち上げたので新記録です。では、僕はLeMUに戻りますね……それともヒスイにしようかな……。

2021年12月まとめ

 

 新年あけましておめでとうございます。……寒いなあとぼんやりしているうちに年が明けていたので特に前置きで言うことが思い付きませんね。2022年もよろしくお願いします。

 

 

超人X 1~2 (石田スイ)

 石田スイ先生の新作⁉ 正直もう描かないんじゃないかと半ば諦めていたのでたいへん嬉しい。ペニ……も消えるし。

 石田スイ作品ではもうお馴染みとなったダーク寄りのヒーローものフォーマットで、序盤からハッタリの効いた一枚絵がバシバシ決まるのがカッコよくて楽しいです。独特のノリも懐かしい。二巻の野球少年みたいなショートエピソードがもう少し続くといいなあ。

 

まほり (高田大介)

 超面白かった。調査パートが面白いミステリはいいものです。調査パート、半分くらい「図書館で調べものする」という地味さですけどね。面白い。

 堅実で現実的な調査手法を意識しながらも、主人公らのひと夏の冒険が学術的な観点からはまだまだ未熟なものであるという視点が一貫していたところも好きです。真相にたどり着いたのは偶然と客観性からは程遠い事情によるもので、たどり着いた真相その者についても真実の一側面に過ぎないということ。それでも夏の終わりに間に合ったのはそういった個人的な感傷があったからだということ。個人的な事実の象徴であり、最大の切り札でもある「彼だけが知っていた手がかり」がラストで明かされるのもスマートでした。

 

輪るピングドラム

 運命と愛と、そして家族のお話。もっといろんな要素がおもちゃ箱みたいにぎっしり詰め込まれてましたが、大きく分けるとこの三つかなと。

 リンゴや電車や日記や棺や箱やペンギンや氷や炎……無数のモチーフが無数の意味を内包し、繋がり、いつしか輪になりまわっていく。キャラのバックボーンが明かされるにつれて伏せられていた意味が分かっていく後半戦は特に面白かったです(もうかなり前の作品だからネットにごろごろ考察とかが転がってるのがとてもありがたかったです)。選ばれなかった可能性も抱きしめて、生きていこう。

 

 新年一発目はここまで。みじけえ。ピングドラムの映画、かなり楽しみです。

 

 

 

 

2021年11月まとめ

 

DARK SOULS REMASTERED」が楽しい!

 

 アクションゲームはPSPのモンハン以来だったのでまあ死にまくってたんですが、まあ楽しい。初見殺しにはおおよそ引っ掛かりましたがそれでも楽しい。とりあえず一度は死ぬけど、トライ&エラーでなんとかなる作りになってるのが良いですね。やりすぎてもうラスボス手前まで進めてしまったのですが、倒すと強制二週目らしいのでその手前で延々マップをうろうろしてます。二週目は人のままでクリアを目指したいですね~。

 

法廷遊戯(五十嵐律人)

 ひっさびさのメフィスト賞

 ルールがあること、現実を何らかの枠で切り取っていること、そしてプレイヤーがいること、作者がいること。列記してみるとゲームとミステリに共通する枠組みは多いですね。システムが一定のルールに沿って駆動するなら作者の手を離れても既定の路線をたどるものです。ゲームとミステリはもちろんのこと、本作が名を冠する法廷だって同じでしょう。起訴の時点で勝負はほとんど決まってるって話もありますし。しかし時にそんなシステムが、人の意志と手によって未知への扉になりうることもあります。そういう意味で、どこまでも神たる彼の思惑を出なかった結末には個人的に少し不満もありましたが……しかしそんなシステムの在り方こそ、何よりも本作の象徴なのでしょう。

 

アカギ 闇に降り立った天才 全36巻 (福本伸行

アカギ-闇に降り立った天才 1

アカギ-闇に降り立った天才 1

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 実を言うと「天」を読んでないんですけど、雀魂でコラボしてたのでそろそろ読むかと一気読み。アカギもとてもいいキャラクターだと思いますが、その敵役として中盤以降のほぼ全てを担った鷲頭様がめちゃくちゃいいキャラクターだったと思います。

 鷲頭様、どこまでも生き汚いのがとてもいいです。死と合理の化身であるアカギと対を成す生と豪運の擬人化。「天」でおじいちゃんになってる……つまりは絶対に死なない存在であるアカギに身一つで相対する羽目になってしまった彼の這って進むような戦いがとてもかっこよかった。大いなる意志に導かれ、ただ一人の強敵として対峙した二人の行く末がとても静かに語られるエピローグも渋い。

 それはそうと地獄編が始まった時、雑誌で読んでた人たちどんな気持ちだったんだろう……。一気読みしてよかった……。

 

夢見が丘ワンダーランド ~3巻(増田英二

「実は私は」「週刊少年ハチ」の増田先生の新作。相変わらず作劇のピーキーさがとても楽しいです。

 空想が溢れて現実に干渉するようになった世界で繰り広げられるSF、青春、ラブコメ、そしてホラー。シリアスとコメディのバランス感覚が異様で、なんでこれでちゃんとまとまっているのか全く分からない。得難い個性だと思います。ストーリーテラーとしては熱く青臭い青春とドタバタラブコメを得意としてるのに作画の面ではホラーを大得意とするちぐはぐさをものにして自分だけの武器にしているのが大変良いです。長く続けることはなさそうな雰囲気ですが、長く続けば続くほど個性が光るタイプの作品だと思うのでもう少しやってほしいなあ。

 

コージーボーイズ、あるいは消えた居酒屋の謎 (笛吹太郎)

 新刊を読もうキャンペーン第一弾。コージーミステリというジャンルは良く知らないんですが、日常の謎に隣接しているジャンルという認識でいいんですかね? なんか違う気もするので知っている人教えてください。

 扱われるのはいずれもシンプルな謎でありながら、見事に盲点を突く作りになっているのは語り口の妙でしょうか。盲点をつくというか盲点をつくるというか。木を隠すなら森なんて言いますけれど、堅実なつくりと力みを感じない自然な佇まいは既に新人らしからぬ領域ですね。ぜひともこの路線でシリーズ化してほしい。

 ベストは「ありえざるアレルギーの謎」ですかね。

 

 以上。この感想ブログもそこそこ続いてきましたが、四作くらいがちょうどいい感じがしてきています。ゲームの感想も書こうと思うんですが、書くタイミングがわからない。ゲームの終わりってどこだ? ラスボス倒したとこでいいのか?

 

 

 

2021年10月まとめ

 

 

 先月も書きましたがニンテンドースイッチを買いまして、今月はゲーム三昧でした。あの後「大逆転裁判1・2」「FE 風花雪月」を買ったせいで休日に終日ゲームしてることさえしばしばあります。どのゲームもボリュームがすごくて終わる気配がありません。超楽しい。

 あとは友人たちと「征服少女(古野まほろ)」の推理会をやったりしました。二か月間問題編に向き合う経験は初めてでいろいろなところがバグった気がします。超楽しかったし得難い読書体験だったな……と思うのですがいざとなると書くべきことが思い浮かばなかったので個別項目はありません。夢だったみたいな気分だぜ。

 では今月の名作たち。ちょっと少なめかな?

 

鉄鼠の檻 (京極夏彦)

 先月に引き続き百鬼夜行シリーズ第四弾ですね。本作は分冊で四つに分かれたせいで三巻表紙にでかでかと「の」の一文字が書かれているみたいです。もうちょい何とかならなかったのか。

 今回の舞台は禅寺という「言葉が異なる檻の中」。ということで、三作にわたって登場人物たちが絡めとられた憑き物落としの呪法が通じない事件になっています。言語という不完全な変換器を嚙ませたことで不可解な様相を呈してしまう異界の事件を、言語のみで成り立つ小説媒体にて作り上げたクソ度胸だけですでに好きですし、加えて内実が伴っているんだからもう大好きです。その内実を理解することは叶わず、もしかしたら伽藍堂でしかない可能性を孕んでいたとしても。

 異界の住人には呪法が通じない。だから異界を、檻を打ち壊すことこそが今回の憑き物落としであり、そしてそれでもなお真犯人……檻そのものの擬人化のような存在には最後まで憑き物落としが成らなかった。続く「絡新婦」に並んで、京極堂の限界が示された事件であったように思います。

 

絡新婦の理(京極夏彦)

 改めて読むと対応する冒頭部分と結末部分が本当に良いですね。平面を飛び越えて立体的・時間的にも拡張され絡まりあった事件を解体し、解体し、解体し尽くした果てに残った桜吹雪と闇の裔。言葉のみの対決。推理であれ憑き物落としであれ、手続きそのものを無効化してしまう蜘蛛の巣は、前作とは違う意味で呪法が効かない事件です。結末を知ったうえで読むと呪術師たちが何をしたのかが全く違って見えますね。おそらくは榎木津――最悪の場合「関わる」ことなく事件を解決しかねない探偵――を最大に警戒していたと見える蜘蛛。蜘蛛の巣を降りてから、すなわち事件が終わってから、彼女がその名を失くすまでの刹那を狙いすました憑き物落とし。理の擬人化たる二人が対決するのは、事件が語られる前と事件が語られた後である。構造美の化け物だと改めて感じました。

 

 

 と、今月は二作。少ない気がしますけど百鬼夜行二冊はどう考えても超ハイカロリーだと思うんですよ……。来月は塗仏……にはならない気がしなくもないです。ちょっとメフィスト賞読みたい気分なんですよね。

 とはいえ短すぎるのでちょっと追加。最近YouTubeで「ラグトレイン」のPVを延々リピートしてます。一年前のやつ? うるせえ!

www.youtube.com

 この動画、シンプルながら動きが癖になりますね。ぴょこぴょこ跳ねてるとこが好きです。歌の気だるげな感じもよき。

 

 

 

 

 

 

2021年9月まとめ

 

 

 ついにニンテンドースイッチを買いました。新型の抽選は外れたので従来型ですがPSP以降のゲームを知らない僕なのでめちゃくちゃきれいなグラフィックとすさまじいまでのつくり込みをとても楽しんでいます。やー、すごいですねゼルダの伝説ブレスオブザワイルド。

  今日一日を完全に持っていかれました。ホントに楽しい。野原を駆け崖にへばりつくだけでも楽しい。アクションスキルが低いので今後のボス戦とか苦労しそうですが、その辺も含めて隅々まで満喫しようと思います。今のお気に入りは落下し寸前でパラセール開いてダメージ無効にすることです。たのしい。

 では、今月面白かった作品たち。今月は百鬼夜行特集です。多分再来月くらいまでずっと読み続けます。

 

 

姑獲鳥の夏 (京極夏彦)

 夏が終わるなー、夏っぽい小説読んでねえなー、という思い付きから再読。びっくりするぐらい面白く、また以前は気づかなかったことがわんさか出てくるとても楽しい読書体験でした。今更言うまでもないことですけど名作ですねやっぱり。

 見えないもの、見えているもの、境界の向こう側にある不確かなもの。孤島や館、密室と呼ばれる区切りの中に閉じ込められている推理小説という形式に、憑き物落としという解決装置を代入しているのがやはり本シリーズ最大の特徴でしょうか。言葉による境界の操作。線を引き、扉を作り、視座を変える呪術。事件をそのまま解決するのではなく、妖怪としての名を与えて解体する憑き物落とし。美しい文字により立ちあがってくる彼岸の景色がとても妖しく、惹かれます。

 

魍魎の匣 (京極夏彦)

 はい二連続百鬼夜行です。今月は三連続百鬼夜行になります。いやー面白いですね! たぶん今回これしか言いません。面白いですね!

 二作目にして最高傑作の呼び声も高い(個人的な印象だと絡新婦とのツートップで語られてるイメージがある)本作ですが、評判に違わぬ完成度ですね。匣という強い境界のモチーフがとにかく良いです。ミステリ的には密室を想起するそれが、様々に形を変え次々と現れる。全ての匣を正しい手順で開けていく憑き物落としに惚れ惚れします。

 あと、本作については漫画版もめちゃくちゃいいので是非どうぞ。いや本作に限らず百鬼夜行の漫画版はすごく良いのですが、魍魎と絡新婦は特にラストシーンがいいです。「悪党、御用じゃ」と、箱と旅する一枚絵がめちゃくちゃ良い。

 

 

狂骨の夢 (京極夏彦)

 なんか狂骨だけ分冊一巻が出てこないので二巻で……。これ、三巻の表紙でかでかと「の」って書かれてるの? と思ったら「夢」で安心しました。三巻分冊なんですね。ちなみに魍魎三巻は「匣」でした。

 いやーおもしろいですね! でも京極堂がマジでいつまで経っても出てこないのには正直笑ってしまった。本当にに影も形もない。600頁主人公不在は強気すぎますけど全く問題なく面白いのでさすがの筆力と言わざるを得ません。彼岸と此岸、箱の内外ときて、今回の境界は頭蓋の内と外の世界。姑獲鳥、魍魎の時にも感じましたが、答えをそのままあらかじめ書いているんですね。解釈も意味付けもなく、夢と現実がそのまま一致する。言葉が現実と重なる。

 と三作続けて読んだわけですが、こうして連続して眺めていると共通テーマがくっきりと浮かび上がるのも面白かったです。見えないもの。見えるもの。人それぞれの世界。あらゆる現実に不思議なものはない。通りもの。名づけと解体。そして、それらを操る黒衣の拝み屋。

 

 

映画クレヨンしんちゃん 謎メキ!花の天カス学園

www.shinchan-movie.com

 面白いぜって評判だったので滑り込みで観に行きました。ちょー面白かったです。個人的にオトナ帝国に並ぶくらい好きです。オトナ帝国とテーマが真逆(あるいは同根)なのも並置しやすいですし。

 とにかく要素の配置と回収が上手くて、構成がきれいで、そのうえではみ出したり突き抜けたりする要素がさわやかで、つまりは理想的な青春ミステリだったと思います。 

 ミステリとして見るならば、僕はとある手掛かりを完璧にスルーしたので完全敗北です。頑張ればいい線いけそうというとてもいい難易度。青春ものとして見るならば、「いつかくる青春とその事前体験」という形式がかなりレアですごくよかったですね。幼稚園児が主役のクレヨンしんちゃんならではだったと思います。

 そして青春ミステリとして見たならば、「青春はミステリー」の合言葉に象徴される青春とミステリの対比がとても素敵でした。わからないものを解き明かすのも、わからないままに受け入れるのも、どちらも簡単に白黒に分けられるものではありません。孤独も間違いも後悔も青春の中にあり、時に暴力的ですらある青春を、一口によい言葉とは言えない青春を、パワフルに駆け抜けていく少年少女の姿がとてもとてもまぶしかったです。間違いなくオールタイムベスト。

 

 

子供はわかってあげない

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 まさかの映画化。すげー面白かったです。絶対に無理であろう原作再現を変則的にこなしているのがプロの技ですね。大まかなストーリーラインを除き、設定も構成もセリフ回しもキャラクターの性格さえも原作と異なっているのに、「あの夏の空気」をきっちり切り取っているのがとてもいい。個々を見ると別物レベルで違っているのに全体図がよく似ているというのが魔法のようでとても不思議。原作で好きだったセリフもキャラもごっそり削られていたのに終わってみたら大満足というとても希少な経験をさせてもらいました。ぜひとも「水は海に向かって流れる」も映像化してほしい。

 

 

 終わり。百鬼夜行三作と映画二本という偏った月でしたが、とてもとても満足です。来月は鉄鼠、絡新婦の二冊読めたらいいなーと思います。なにせゲームで忙しくなるからな……!

 

 

 

2021年8月まとめ

 

  変に雨が続いてようやく晴れたと思ったら暑さが戻ってきて、何とも過ごしにくい夏でしたが皆さんいかがお過ごしでしょうか。僕はずーっと「征服少女」を読んでました。いやー、解けない。全然わからん……とも言い切れないのがもどかしいですね。もうちょい筋道だって推理できるまでもう少し付き合うことになりそうです。

 とはいえ他の作品に全く触れていなかったわけでもないので、前置きはこれくらいに。今月面白かった作品、まずは久々に劇場で観た映画から。

 

 劇場版 少女歌劇レヴュースタァライト

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 公開終了直前に滑り込みで見に行きました。やはりというか当然というか、歌劇が題材なだけあって音楽がすごく良かったですね。何よりもそこが大事だと思います。加えて、アニメだから画面も派手で最後まで楽しく観ることができました。正直、アニメ版ではどうも愛城華恋という少女が好きになれなかった(嫌いとかではなく、なんか印象が薄かった)んですが、ひとつのゴールとその向こうを示唆する本作に触れてようやく彼女のことを好きになれた気がします。

 さらにさらに、立て続けに行われるレヴューシーンがどれもすげえ力の入りようだったのが嬉しかったです。青臭くてわがままで真剣な顔で、これからのためにこれまかっでの関係に決着をつける場面がつまらなかったら格好付かないですもんね。大場ななと星見純那のレヴューでポジションゼロの潰れたT字を別れ道に見立てたのにはやられました。その手があったかと。ポジションゼロが別れの暗喩という可能性にあそこまで思い至らなかった。

 いい絵はたくさんありましたが、途中で急にテンションが変わる「わがままハイウェイ」が一番好きです。レヴューもテンションもどうかしてたぜ。

 

 

ほしとんで  五巻 (本田)

 

 確かに他にいないんですが、最終巻の表紙おめーかよな表紙がすごく良いですね。おいしいポジションだよなあホント。

 というわけでいつの間にやら完結です。最後まで素朴でのんびりしたテンションを維持したまま、未知なる世界に触れる体験を楽しんで終わったのがとても素敵でした。会話のオタクっぷりとか、要所要所で垣間見える創作との距離感とかがとても心地よかったです。俳句のことはわからないけど、わからなくても触って転がして遊んでみていいのだと思えたし、そうこうしているうちにわかることもあるのでしょうし。就職してもなんか死ぬほどめんどくさい隼先輩の社会人生活に幸あれ。

 

 

宙に参る  2巻 (肋骨凹介)

 

 ずっと「ぼこすけ」って読んでたんですけど調べてみたら「へこすけ」らしいです。宇宙横断四十九日、まだ道の半ばにもたどり着いていない様子ですが、相変わらずめちゃくちゃ雰囲気がいい。どこかとぼけているキャラクター達とSFマインド、センスが光るセリフ回しも非常に好み。脱線しまくりの珍道中がどこにたどり着くのか、いやゴールは決まっていますが、とにかく旅の終わりまでにどんな風景が社葬を横切るのかこれから先も楽しみでなりません。

 

 

 今月は三作で。トップ2とかフリクリも面白かったので書くつもりだったんですが、今日はこの後ワクチン二回目が控えていますのでこの辺で時間切れです。にしても短いな今回。